今回は、「サクランボの唄」B楽節を深掘りしていきます。
B楽節で私が少々悩んでしまったのが、冒頭に書かれている「con grazia」です。
「優雅に」「優美に」といった意味になるこの「con grazia」。
これをどう表現するか、がB楽節演奏のポイントになるかと思います。
音声でも聴いていただけます。
・「con grazia」どのように弾く?
・移行部分について
B楽節を通して
B楽節は16小節+5小節で成り立っています。
B楽節も、この中でさらにc、dと2つに分けることができます。
まとめると、以下のようになります。
c:4小節ずつの対比が2回
d:5小節の移行部
まずはじめの16小節は、4小節ずつの対比(c)が2回繰り返されます。
続く5小節の移行部(d)を経て、再びA楽節となります。
忘れてはいけないのは、ト長調に移調していることですね。
A楽節のハ長調からト長調になっています。
これは大きな変化です。
こうした状況の中、冒頭に「con grazia」が書かれているということですね。
con grazia どのように弾く?
⇩音声でも聴いていただけます。
「優雅に」「優美に」という意味の「con grazia」。
それを表現するのに1つ注目したいのは、ハ長調からト長調へ移調している、ということです。
私のイメージとしては、
明るいハ長調から落ち着いたト長調へ
といった感じ。
ハ長調、ト長調それぞれの音階を弾いてみたり、改めてA楽節、B楽節を別々にじっくり弾き直してみたり。
それぞれの調から受けるイメージと、ハ長調からト長調への変化から感じるイメージをいろいろと味わうようにしてみました。
その結果、⇧このような印象に落ち着きました。
どんなところからそのように感じたのかというと・・
・A楽節の冒頭部分より、B楽節の冒頭部分の方が音域が低い。
・A楽節はじめの音は高い音域の主音。B楽節のはじめの音はそれより低い音域で、主音ではなく属音。
・A楽節の最後の音は、はじめの音の1オクターブ下の主音。そのすぐ上の音からB楽節のが始まっている。
こういったことです。
A楽節より音域が低いこと。
そして、主音ではない音から始まっていることで、さらに雰囲気を変化させている。
そこが、A楽節よりも落ち着きを感じさせることにつながっているのではないかと思いました。
具体的な弾き方としては、以下のことに注意を払っています。
・音の大きさは全体的に抑え気味(pまで小さくはしない)
・1オクターブ上がるまとまりの部分は、さらに音を抑えて、遠くから聞こえてくるような優しいイメージで。
・スタッカートは長め。4小節のまとまりの最後の音も長めにたっぷりと。
これで優美な、優雅な感じになったでしょうか・・
実際に表現できているかどうかは、演奏者の力量によりますね。
また、調に対するイメージについても、人それぞれ感じ方は違うと思います。
ともかく、最低限、A楽節との違いをきちんと表すことが大切だと考えています。
移行部分について
⇩音声でも聴いていただけます。
最後の5小節の「移行部分」についてもまとめます。
ここは、ト長調から再びハ長調へ戻る流れを作っている部分ですね。
いきなりハ長調に戻るのではなく、余裕を持たせるというか、聞く人に「変化しますよ」と前もって伝えるというか。
そのような役割だと考えます。
⇩移行部分の最初の所です。

ト長調の調号はファに♯が付きますが、♮になっていますね。
これで、調が変わることを示唆しています。
そして⇩

移行部分の最後の和声(赤で囲った部分)。
これは、G7(ソシレファ)となっていて、ハ長調のⅤ7にあたります。
このあと再びA楽節が始まるわけですが、最初の和声はハ長調のⅠ(ドミソ)になっています(黄色で囲った部分)。
Ⅴ7はⅠへ進む力が強い和声のため、自然な形でハ長調へ入っていくことができます。
弾き方としては、以下のようにするとよいと思います。
・♮のついたファを少し強調させる
・移行部分最後のソを少し強調させる
2つ目の「ソを強調させる」ということについて。
ソの音はハ長調の属音にあたりV7の音の根音でもあるため、ハ長調の主音であるドへひきつけられる力を持っています。
そのため、少し強調させることで、より自然な流れでハ長調へ入っていくことができます。
作曲者も、それを意図してこの音を配置しているハズです。
少しゆっくり目に弾いてもよい
この「移行部分」、記号はなにも書かれていませんが、だんだんゆっくりにして弾いてもよいと思います。
その方が、聞いている人に「曲調が変わる」ことが伝わりやすいですよね。
最後を伸ばす音にして5小節と中途半端な数になっているのも、「移行」だということを伝わりやすくしていると感じますし、自然にゆっくりにしたくなりますね。
この「自然なゆっくり」でいいと思います。

B楽節についてはこの辺で。
次回はcoda部分についてまとめます。