今回は、アントン・ディアベリ作曲「アンダンティーノ・カンタービレ」です。
この曲は、ソナチネ・アルバム第2巻に収載されている、作品151-1の第1楽章にあたります。
私の演奏は、『ブルグミュラー併用ピアノ曲集』(ドレミ楽譜出版社)に収載されているものを使っています。
『ブルグミュラー併用ピアノ曲集』は、ブルグミュラー25の練習曲の難易度に基づいて収載曲が分けられています。
その中で、この「アンダンティーノ・カンタービレ」は「ブルグミュラー12~18番程度」となっていますね。
この曲の難易度の目安になるかと思います。
それでは、以下に詳しく書いていきます。
「アンダンティーノ・カンタービレ」基本情報
| 題名 | ソナチネ集 第1番 第1楽章 Op.151-1 |
| 作曲者/国 | アントン・ディアベリ(1781-1858)/オーストリア |
| 時代区分 | 古典派 |
| 調性 | ト長調 |
| 楽式 | 3部形式 コーダ付き(A-B-A(変奏)-コーダ) |
| 拍子 | 4分の3拍子(アウフタクト) |
| 速度表示 | Andantino cantabile |
くり返しを入れて60小節。演奏時間は2分ほどでしょうか。
伴奏は、ほとんど3連符で動きっぱなし。
そこに、メロディーをきれいに乗せられるといいですね。
速度表示は「Andantino cantabile」。
「Andantino」は、Andanteよりやや速く。
「cantabile」は、歌うように。
ということで、意味はそのまま
「アンダンテよりやや速く、歌うように」
となりますね。
全体を通しての演奏のポイント
演奏の最大のポイントは、
左手は伴奏に徹し、右手のメロディーを美しく歌わせて弾く
こうした左右のバランスがとても重要になると考えます。
それを踏まえたうえで、
- 右のメロディーの音の動き
- 左の3連符のリズムの維持
- a(変奏)の連続スタッカートの弾き方
こうしたことに重点を置いて練習をしました。
それでは、まずメロディー部分の状況を中心に各楽節ごとにまとめていきます。
A楽節
A楽節は、8小節をリピートして16小節になります。
冒頭からの2小節にわたるリズムが繰り返されます。
この2小節の形は、曲の終わりまで音を変えて何度も登場します。
これがこの曲のテーマ、と捉えて、意識的に演奏することが大切ですね。
演奏のポイント
3つのポイントについてまとめます。
2小節にわたるリズムについて
冒頭の2小節にわたるリズムというのはこちらです。

冒頭にピアノ(p)、そしてdolce.とあります。
2小節のまとまりでクレッシェンド、ディクレッシェンドが書かれています。
2小節間のこの形が、音を変えて全編通してくり返されます。
これをどう演奏するかが、この曲の重要なところだと考えます。
付点のリズム(アウフタクト部分)の次の4分音符3つは、2小節目の最初の4分音符へ向かって流れていくように丁寧に弾きます。
その流れを2小節目の4分音符で受け止めて、次の8分音符でスッとすくうようなイメージでしょうか。
それが伝わるように、音量を調節して弾かなければいけないですね。
後半部分はひとまとまりとして(5~8小節目)
後半の5~8小節目の4小節間については、この4小節をひとまとまりと捉えます。
↓こちらです。

5小節目にcrec.と書かれ、6小節目の頭のフォルテ(f)を頂点に音を小さくしていく。
これで4小節ですね。
ただ、5,6小節目は冒頭2小節と同じようにとらえて、いったん音は区切って弾いています。
上がっていっている音をそのままスッと上げるイメージでしょうか。
楽譜に書かれているスラーも区切られていますね。
音高の変化
この楽節でもう一つ大切にしたいのは、2小節のまとまりごとに音が1音ずつ上がっている、ということです。
6小節目のソが一番高い音ですね。
そこから音が下がっていって、最後の音は最初と同じ音になってA楽節が終わります。
ソから上のソまでの1オクターブ間で、音が動いているということですね。
これを意識して弾くことで、「A楽節としてのまとまり」を表現できるのではないでしょうか。
B楽節
B楽節に入ります。
B楽節は8小節です。
やはり、冒頭2小節と同じ形が続きます。
ですが、こちらは2小節ごとに転調を繰り返し、さらに和声の進行が終止形になっています。
この変化をしっかりと認識しなければいけないですね。
演奏のポイント
ポイントを以下の2つに分けてまとめます。
・転調を繰り返している
・不安定な響きから安定した響きへ
転調を繰り返している
B楽節は、2小節まとまりの形が転調しながら4回繰り返されます。
それぞれの調は、
ト長調→ロ短調→ニ長調→引き続きニ長調
となっています。
ト長調から属調であるニ長調へ、その間にロ短調を経ている。
という変化です。
ロ短調はニ長調の並行調。ということで、奇抜な変化にはなっていません。
いったん短調を通るところが大きな特徴ですね。
ここだけが短調!
その変化を十分に意識して弾きたいところです。
不安定な響きから安定した響きへ
もう一つ重要なことは、和声の進行です。
このB楽節の2小節のまとまりは、2小節ごとに終止を形作っています。
つまり、和音記号Ⅴ-Ⅰの進行になっているということですね。

こちらはB楽節の冒頭の部分です。
2小節のまとまりは、まずト長調で、Ⅴ₇-Ⅰの進行になっています。
次はロ短調のⅤ₇-Ⅰ(F♯₇-Bm)。
そして、ニ長調のⅤ₇-Ⅰ(A₇-D)。
ですが、メロディーを見てみると、2小節のまとまりの最後の音はその調の主音にはなっていません。

「不完全終止」となっていて、まだ先があるという不安定な響きになっています。
B楽節の終わりで主音になります。

これで、「完全終止」としてはっきりとした”終わり”というまとまりを作っていますね。
不安定な響きを作っているもう一つの要因が、メロデイーの半音の動きです。

この動きが繰り返されていることも、不安定な響きから安定した響きへという流れを強調していますね。
大事に弾きたい音、そして流れです。
この、メロディーに半音の動きを含んだ不完全終止の繰り返し。
これが、不安定な響きから安定の響きへの音の流れを作っています。
しかも、音がひとつづつ上がり、短調を挟んでいるという変化。
これらを意識的に強調して弾くことで、B楽節がとても映えるのではないかと思います。
A楽節(変奏)
曲はそのままA楽節の変奏へ入ります。
この部分は、3連符が右に移っています。
ピアノ(p)でスラーのかかったスタッカートが4小節。
5小節目からスタッカートがなくなってスラーのみとなり、cresc.をして7小節目にフォルテ(f)が書かれています。
全8小節ですね。
B-A(変奏)は繰り返し、2カッコからコーダへ入ります。
演奏のポイント
次の2つに分けてまとめます。
・A楽節の「変奏」である
・メゾ・スタッカートからスラーのみへ
A楽節の「変奏」である
実は、この部分がAの「変奏」だということは、自分では分かりませんでした。
どのような楽式なのかと色々と考え、調べた結果、『和声と楽式のアナリーゼ』(音楽之友社)の中に記載されているのを見つけた、というわけです。
音をよく見てみると、確かに変奏だなと分かります。
3連符と音が細かくなっているだけで、大きな流れはAと同じです。


比べてみると、「確かに~~」と思われるのではないでしょうか。
和声進行も同じです。
| 1,2小節目 | 3,4小節目 | 5~8小節目 | |
| A楽節 | Ⅰ‐Ⅴ | Ⅴ‐Ⅰ | Ⅰ‐Ⅳ‐Ⅱ‐Ⅰ‐Ⅴ₇‐Ⅰ |
| A変奏 | Ⅰ‐Ⅴ | Ⅴ‐Ⅰ | Ⅰ‐Ⅱ‐Ⅴ₇‐Ⅰ |
展開形や代理コードの使われ方は若干違っているところはありますが、進行としては同じです。
4小節目までは全く同じ。
5小節目からは、A楽節の方が、和声の変化があるということですね。
別のメロディーが始まった、のではなく、変奏だ、と理解して弾くこと。
これは、演奏する上でとても大事なことですね。
メゾ・スタッカートからスラーのみへ
もう一つの特徴は、スタッカートの変化です。
はじめの4小節は、スタッカートとスラーの両方が書かれています。
つまり、メゾ・スタッカートですね。
5小節目からはスラーのみに変化。
この違いは、はっきりと弾き分けることが大事だと考えます。
強弱の違いもはっきりとしています。
はじめの4小節はピアノ(p)。5小節目にクレッシェンドがあり、6小節目にフォルテ(f)がついてデクレッシェンドになる。
このようになっています。
ということで、はじめの4小節は、音を抑えて細やかに弾き、5小節以降は明るくのびやかに弾きたいですね。
*楽譜によっては、メゾ・スタッカートではなく、スタッカートのみが書かれているものもあるようです。
コーダ
B楽節-A変奏を繰り返し、2カッコに入って以降はコーダになります。
全12小節です。
やはり、2小節のまとまりが少し形を変えて繰り返されます。
4回繰り返され、その後A変奏の所のような形で3連符が続き、曲が終わります。
演奏のポイント
このコーダは、大きく2つに分けられます。
・2小節のまとまりの形が4回繰り返される部分
・A変奏のように、3連符が続く部分
2小節のまとまりの形が4回繰り返される部分
はじめの部分は、「2小節のまとまりの形が4回繰り返される」と書きましたが、
2小節のまとまり2つの4小節でひとまとまり、それが2回繰り返される
と捉える方がよいと思います。

この部分は、音の動きが大きいのが特徴ですね。
重音に変化している4分音符3つが並ぶところから次の小節の頭の音は、特に大きく動いています。
また、2回目のフレーズは1回目より1オクターブ上へあがっています。
3つ並ぶ4分音符が重音になっていることも含めて、こうした変化は大切にしたいところです。
スラーのつき方、強弱のつき方はA楽節と同じ。
2小節のまとまりで、
ピアノ(p)で始まり、クレッシェンド→デクレッシェンド
となっていますね。
忠実に、きれいに表現したいところです。
でも、4小節をひとまとまりととらえる意識は持ちたいです。
次の1オクターブ上がるところで、きちんと区別を持って弾くことが大切だと考えます。
A変奏のように3連符が続く部分
コーダ後半は、A変奏に似た形になっています。
3小節続き、4小節目の頭まででひとまとまりですね。
音は、ずっと下行しています。
ですが、強弱記号はメゾフォルテ(mf)で始まりフォルテ(f)になる、と大きくなっています。

そして、最後はピアニッシモで終わります。

この部分は、曲の最後の盛り上がりと捉えます。
盛り上がって、静かに終わる、ということですね。
この音の落差はしっかりとつけて弾きたいところです。

以上、主にメロディー部分について私自身の解釈をまとめました。
ご質問等がありましたら、お寄せください。
以下の2つについては、新たな記事にまとめます。お読みください。
- 左の3連符のリズムの維持
- a(変奏)の連続スタッカートの弾き方